100枚のカードと囚人の話
こんにちは,ぼくではないひとです.
ねむい,ねむすぎる.
二十歳を超えたあたりから明らかに徹夜する体力がなくなっている気がする.こうやってどんどん何もできなくなって最後にはちっちゃいダンゴムシみたいになって死んでいくんだろうな.ああ人の世はなんと儚きこと・・・
ねむすぎ?
ほんとうにねむい.それはそれとして昨日(狭義今日)の朝五時に突然,昔授業で聞いた論理パズルを思い出したので*1,その紹介および解答を載せたいと思います.
はてなブログ,が書けるとかいう話あるけどそれはそれとして普通にDriveでpdf共有する方がどう考えても手間がかからないことに気づいた.まぁいいや,いざ尋常に.
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ある監獄には100人の囚人がおり、囚人たちには1から100までの囚人番号が割り振られている。いま、看守は以下のようなゲームを行う.
①1から100までの数字が1つずつ振られたカード100枚をシャッフルし,裏向きに1列に並べる
②囚人をランダムに1人ずつ呼び出す.
③囚人は1枚ずつカードを合計50枚表返し,その後すべてのカードを裏向きに戻す.
すべての囚人について,自分が表返した50枚の中に自分の囚人番号が書かれたカードが存在すればこの囚人たちは釈放される。囚人たちは事前に相談が可能であり,ゲームが始まるとあらゆる手段での情報伝達を禁じられる. このとき,囚人が釈放される確率が30%を超えるにはどうしたらよいか?
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問題は以上です.たとえば,それぞれの囚人がランダムに50枚選ぶという戦略をとると,各囚人が自分の番号を引き当てる確率はなので,釈放される確率はと非常に低くなります.これではいけませんね.
ところで,こういう論理パズルってなぜか囚人と釈放が絡みがちですよね.こんなお気楽ゲームみたいな感じで囚人釈放されたら一市民としてはたまったもんじゃないんですけど・・・
さて,そろそろ解けたでしょうか?無理ですね.もしこの短時間で解いてくる人間がいたらぼくはその人を人間と認めたくないです.怖すぎるので・・・
では解答です.
いかがでしたか?問題の難易度にしては単純な戦略で興味深いですね.興味深いって言え!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
久々にtikz使ったらつかれました.今日はこんな感じで.
それではまた.
*1:この辺の深夜帯になってくると思考が飛び飛びで知っちゃかめっちゃかなのでこういったことを思い出しがち
日記03 人助けの話
こんにちは,ぼくではないひとです.
きょう友人とひさびさにラーメンを食べました.外の寒さとの落差もあって温かいものは非常に美味しかったです(0点の食レポ).
ところで,今日は友人の家で待ち合わせだったのですが,そこに向かう道中おばあさんが重い荷物を運んでいました.ぼくが「重そうですがお荷物お持ちしましょうか?」と声をかけたところ体よく断られてしまったので,「うるせえ他人の厚意は素直に受け取っとけやボケカス!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」っつってその場で撲殺しました.嘘です.
ぼくは(自分で言うのもなんですが)他人に親切な行いをする方だと思います.重い荷物を持った老人を見かけたら必ずと言っていいほど高確率で声をかけるし,ハンカチが落ちてたら近場の交番を探して届けるし,自転車を倒してしまって大変そうにしている人がいたら助けます.
さて,これだけ聞くとまともに見えますがその実,頭の中では「誰か俺を救ってくれ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」の気持ちであふれています.今日はお兄さんこの話をしようと思うんだ,心して聞いてくれるかい?別にそんな心して聞かなくていいです.
どういうことかというと,別にぼくは困っている人に同情したりかわいそうだと思ったりは多くの場合*1していなくて(最悪の人間???),自分の生存を肯定するための道具として人助けという善行を利用しています.
言ってしまえば道端で困っている人とかいうのはぼくの中で「生きていてもいいよポイント」を稼ぐためのボーナスステージであって,出会ったらラッキー的な側面が非常に強いです.こういうことばっかり考えてるから自己肯定最強マンになれないんだろ?知ってるようるせえおいお前のせいか?なあおい見てるんだろお前だよこっち向け
とは言っても100パーセント純粋にこう思っているわけではなくて,実際は7割くらいこの気持ちに突き動かされて活動していることが多いです(精いっぱいの保身).
じゃあ残りの3割は何かというと,小中のまともな道徳の授業(?)によって育まれた,「人類全体の総幸福量がでっかいとうれしい~~~」という漠然とした気持ちです.画面の前のクソオタク君は「主語デカすぎ,書き直したら?笑」と思ってるかもしれませんがぼくはマジのマジでそういうきらいがあります.いや本当に.
で,ぼくは別に人助けをしたところで気分を悪くしたりはしないし*2多くの人間はきっと助けられたら気分がよくなると推察されるので,結局この意味でもぼくは人助けをした方がよいというわけです.これそのうちなんらかの非営利団体に莫大な金を寄付する狂人とかになってしまいそうで怖いな,その時は誰か止めてください.そしてそのお金で一緒に孤児院を建てましょう.
というわけで,人の厚意には甘えておいた方がいいのかもしれないねという意味不明な着地点を見つけたところでこの話はおしまいです.少なくともぼくの厚意には甘えてください初対面の人!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!約束しましたからね!!!!!!!!!!!!!!!お願いしますよ!!!!!!!!!!!!!!!!次断ったら本当に容赦しねえからな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ではぼくはさっきから目を背け続けている課題をやりたいと思います.それではまた.
日記02 祖父とコーヒーの話
こんにちは,ぼくではないひとです.
スーパーにご飯を買いに行ったついでに散策をしていたら,とあるインスタントコーヒーが目に留まりました.
ふだんはあまりコーヒーを飲まないぼくですが,このコーヒーは生前に祖父がよく飲んでいたコーヒーだったので思い付きで買ってみました.
帰宅して早速飲んでみると,「そういえばこんな香りがしていたな~~~」という気分とともにいろいろな実家の風景が蘇ってきました.これGreeeenの曲とか流しながら飲んだら完全に中学時代の再現の可能性あるな,たまにはこういう日も良いかもしれませんね.
書いてて思ったけどこれ完全に今話題(もう旬すぎてるかもしれない)の「香水/瑛人」じゃん.「♪祖父のMAXIMのインスタントのそのコーヒーのせいだよ~」じゃん.そりゃ流行るわけですわ,VTuberのcoverしか聴いたことないけど.
これ毎日飲んでたらいつかこの香りは祖父との思い出の香りじゃなくて,いまの大学生活の思い出の香りに上書きされちゃうのかな,それはちょっと嫌だな,う~~~~~ん・・・・・・
まぁとにかく,祖父に見せることが叶わなかった大学生活の中に,祖父の残滓みたいなものが時代を超えて溶け込んでいくのは少し面白いなと思いました.なに言ってるんだか自分でもわからなくなったので書くのやめますね.ガタガタ言ってねぇで進捗を産め!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!了解!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
それではまた.
日記01 日記を書くぞの話
番号付けを「1」ではなく「01」にしたからには10回以上続けるってことですよね!??!?!?!?!??!??!→さぁ・・・・・・?
こんばんは、ぼくではないひとです。
いま明日のゼミの予習をしています。こんなことしている場合ではないのでは?この記事は1時までに書き上げるんで許して下さい。発表の担当範囲ですが、ひとえに歴史的経緯を読み解くのがしんどいです。証明をさせてくれ証明を・・・
毎日レポートとゼミの予習に追われる忙しい日々を過ごしています。理系学生っぽい!!!まぁ忙しいといってもゼミは全部数学基礎論関連ばっかりなので嬉しい悲鳴です。最高!ただし幾何学てめーはだめだ。人類は曲面を調べたいですか?調べたいんだろうな・・・俺にはわかんねーけど・・・
余談ですが、このような気分(どのような?)は「アカデミア」という世界に対する態度として非常に大事だと思っています。人類にはそれぞれいろいろな好奇心があって、基礎研究をしている人たちの多くは自分の好奇心を満たすために研究しているんだと思います。多分そうだと思う、そうなんじゃないかな、だからまぁ、そういう人たちに「それは何の役に立つんだ!」とかそういう指摘をしても的外れなわけです。お前がやってるそのポケモンってやつ、何の役に立つの?(笑)
そして、人類はそういう好奇心に全振りしていてしかも才能に恵まれていたヤバイ人たちの努力をもとに発展していったし、これからも多分そうやって発展していくだろう、いや知らんけど。だから研究者って大事な存在なんですわ。
こういうことをいうと必ず「いや今やってる研究は何年後に役に立つんだよ!」とかいう人もいるんですが(実際脳内の俺がさっき叫んでいました。静かにしろ!!!!!)、忘れてはならない点として研究者は研究者であると同時にそのような過去の遺産の文化保護の役割も(結果として)担っているんだと思っています。じゃあたとえばいま突然全員が理学研究をやめて今後マジでやらないことにしようか。今そうしました!!!!!!おい!!!!!!!!!やめたか?!?!?!??!?!??!!?!??お前だよ!!!!!!!!!!!そういうやつが和を乱すんだぞ!!!!!!!!!!!!!!!
多分今までの人類の基礎研究の蓄積は2世代も交代すればマジで負の遺産になります。論文なんてだーれも読めやしない。誰も読めないので今後科学技術は発展しません、お前のせいです。あーあ。
だからみんなまわりの研究者にも優しくしてあげてください。最近は毎日そんなことを考えています。1時10分なんで書くのやめてゼミ予習しますね。
それではまた次回お会いしましょう。さようなら。
酒の話とか
こんにちは、ぼくではないひとです。友人がTwitterではてなブログの更新を報告してくれないとブログを書けない(書く気が起きないとかいうレベルでなく、存在そのものを忘却している)ので、この記事を書いているということは、まぁそういうことです。
そういえば、このブログのタイトルに「酒」というワードが入っているくせして酒のことを全く書いていないので、たまには美味しかった酒の話でもしようと思います。
先日、大学同期と飲み屋に行った際に飲んだ「兼八」という焼酎が美味しかったです。
チューハイを除く大概の酒は、往々にして原料のわかりやすい風味がしないという気がします。たとえば、ワインは葡萄の皮を噛み潰したような独特の渋みこそすれ、フレッシュで甘酸っぱい「こんにちは葡萄です!!!!!!本日もよろしくお願いします!!!!!」のような風味はしません。まぁ葡萄の皮好きなので問題ないんですけど。そういえばなんか10月からワイン値上がりするらしい、おい、誰のせいだ?お前か?いい加減にしろよ。
また、日本酒を飲んでもほのかに米の香りがする程度で、米が来た!という感じではないような気がします、気がしませんか?気がするだろ?おい早くそうだと言え。
一方でこの兼八は麦焼酎なのですが、後味に麦チョコを噛みしめたような芳醇で圧倒的な麦の香りが立ち込めます。いやもう実際に隣で5億dBで「こんにちは麦です!!!!!!!!!!!!!!おい!!!!!!!!!!!!!!!こっち向け!!!!!!!!!!!!!!」と叫ばれ、毎日鼓膜を原子レベルで破壊されながら日々を過ごしている気さえしてきます。はやく助けてくれ。
そういうわけなので、麦チョコや麦茶の香りが好きな人はぜひ一度飲んでみてほしいです。異常高価酒なのが玉に瑕ですが(貧乏大学生感)、ワインや日本酒と違って焼酎は開封後でもある程度保存がきくっぽいので、ちびちび飲めば意外と安くつくんじゃないでしょうか。
以上、最近の酒の話でした。
本当はこの後に院試の話を書くつもりだったんですが、意外とここまでで文章量があったので次回の記事に回したいと思います。それではまた、次回会ったときにお会いしましょう。さようなら。
100円をたくさん機械に入れてお金儲けしたいって話(後編)
皆様お久しぶりです。ぼくではないひとです。
友人がはてなブログを更新していたのに感化されてブログを書いてみようと一念発起したところ、更新はほぼ1年ぶりだわ自分がなんと名乗っていたか覚えてないわでめちゃくちゃでした。慣れないことはしないほうが良いですね。
えーと、どこまで話したんでしたっけ・・・
そうでした。黒服の人間が変な機械を持ってきて、ぼくがそれを破壊したところまでですね。「100円入れると200円帰ってくる」という謳い文句のくせに回硬貨を入れようとすると途中で文字通り無一文になってしまう、今回はこの現象について考察していきたいと思います。
順序数について、が非有界閉集合(これは、「closed unbunded set」を省略して「club」と呼ばれます)というのは、次の二つが成立することをいいます。
(1) は上非有界。すなわち任意のについてあるが存在して<が成り立つ。
(2) 任意のについて、が成り立つ。特に、に最大元が存在しない場合について考えればこれは、(厳密性には若干欠けるが)「の中の無限上昇列は、その到達点が必ずに入る。」ということを意味している。
補足しておくと、(2)の性質はに順序位相を入れた時、その位相の意味で閉集合であることに対応しています。
が定常集合であるとは、任意の非有界閉集合についてが成り立つことをいいます。
いま、任意のに対して集合が非有界閉集合であることは容易に確かめられるので、定常集合の定義から「の定常集合は常に上非有界」であることに注意しておきます。
さて、は可算順序数に比べてマジクソデカ順序数なので、実は「未満の列がに収束する(すなわち、その列が上非有界になる)ためには、その長さはでなければならない」ということが知られています*1。したがって、先ほどの注意と合わせれば、「の定常集合の要素は個ある」ことが帰結します。
最後に、この話の根幹をなすつよつよ定理、Fodorの押し下げ補題について(定理なのに補題とな?)について述べておきましょう。これは以下のような主張です:
上の定常集合と関数に対して、任意のについてが成り立つとする。このとき、あるが存在して、は定常集合になる。
これは、写像が何らかの(集合論的に)有用な意味を持つ写像だった場合に、定常集合(とくに「非有界」)であるという性質を壊さないまま逆像の意味で対象となる集合を「絞る」、というような方法で重宝する定理です。なにいってんだこいつ感が否めませんが、このあと実際に使う場面で何となく意味がわかると思います。
つかれた!!!!!!!!!!!!!!!
前置きが長くてつまんないったらありゃしないですね。
でも道具はそろったので後はラストスパートです。それに、こんなところまで読み進めているような奴はよほどの暇人か、ぼくの友人か、はたまた集合論に精通していて前半の話題を読み飛ばしたか、「収束じゃなくて共終だし非有界閉集合や定常集合は一般の極限順序数にも定義…」などとお粗末な部分に目を光らせているか、もしくはそのいずれにも該当しないか、まぁとにかく大丈夫です。根拠はないけど。
背理法で示します。いま100円入れると200円返ってくる件の機械(そういえばそんな話でしたね)に、回お金を入れることができた(すなわち、回到達時までに素寒貧にならなかった)とします。いま、今まで機械に投入した100円を「入手順に」番号付けすると、回機械を使ったわけですから、投入した100円には未満の順序数が対応していることになります。ここで、番号の100円について「この100円を機械から入手したのは何回目の出来事であったか」をで表すことにします。機械は回動かしたので、この関数はとなり、また、「投入する100円はその投入以前のどこかで手に入れていなければならない」という当たり前の性質から、が任意ので成立しています。
ここまで読んで、勘の良い方ならFodorの押し下げ補題が使えるシチュエーション、通称「Fodorチャンス」の訪れを予感したと思います。実際、は明らかにの定常集合ですから、ここでFodorの押し下げ補題で集合を「絞る」ことができます。
さて、これによって定義域の集合を絞るとどうなるか。定理によれば、あるという1点のによる逆像が定常集合になるわけですが、このの意味を思い出すと、これは「100円を機械から入手したのは何回目の出来事であったか」を意味する関数でした。すなわち、この逆像は投入した100円の中で、回目に入手した100円のすべての番号の集合を表しているということです。ところで、この機械は何回目であろうと200円しか出してくれないので、この集合は高々2つの元しか持てません。そんなわけで上の定常集合、とくに無限集合になるなんてことはありえない訳ですね。はい矛盾。
以上で、この機械は機関の陰謀であり、欲望に駆られたぼくを路頭に迷わせる悪魔の機械であることがわかりました。壊して正解でした。数学もたまには役に立つんだなぁというところで、参考文献の紹介です。
以上の話は、この本の演習問題から引っ張ってきました。この本はほかにもみんな大好き(?)Goodstein数列の話だったり、Silverの定理の完全証明だったり、トピックとしておもしろい話が盛りだくさんです。しかも、かなり初学者向けに書かれており、ちょっと集合論をかじりたいならとってもおすすめです。下手したらその辺の高校生でも読める。最高の本か????????????????買いです。
はぁ、記事の締め方がわかりません。どうしたらいいんですかね、あの、ここまで読んでくれた方がいらっしゃったら本当にありがとうございます。長々と話してすみませんでした。えー、またぼくの気が向いたときにお会いしましょう。それでは…
100円をたくさん機械に入れてお金儲けしたいって話(前編)
おはようございますこんにちはこんばんは。早くも記事のネタ切れ感が半端ないです。
今回はブログタイトルにもなってるし、いっちょ数学の記事でも書いてやんよってことでそういった話になります。興味がない人はブラウザバック推奨です。
なんてったってはてなブログはが書けますからね!こんなに数学の記事を書くのに向いたサイトもないでしょう。
ぼくは大学で数学を専攻しており、その中でも特に集合論(Set Theory)と呼ばれる分野を勉強していることが多いです。
ぼくはこの分野の魅力の一つとして、「直感に反する結果が出ることがままある」ことがあげられると思っており、今回はそんな話をご紹介できたらと思います。
まず、「整列」や「順序数」といったものについて軽く説明していきます。
順序集合が整列しているとは、その順序に対して以下が成立することです
日本語で言えば、「任意の空でない部分集合が、常に最小限を持つ」と言えます(簡単のため、ここでは「順序」といったとき「狭義全順序」を指していることとしています)
整列している集合の例として、が挙げられます。一方で、やは整列していません。前者はが、後者はそのものが最小限が存在しない部分集合として反例になっています。
ここで、自然数の整列性に着目して「数」を拡張していくことを考えます。そのために、はじめに自然数を何らかの集合の形で定義します。ここでは、自然数と集合の要素の数を自然に対応付けて、自然数のようなものを集合論上で展開します(この方法は、フォン・ノイマン型順序数といわれます)。
まず、0は要素数0の集合と対応付けたいので、と定義しましょう。
次に、1を何らかの要素を1つだけ持つ集合と対応付けたいですが、たった今0という集合を定義したところなので、と定義します。
次に、2を何らかの要素を2つ持つ集合と対応付けたいですが、たった今0と1という2つの集合を定義したところなので、と定義します。
以下同様に、今まで作った集合をすべて集めてくることによって自然数をすべて定義することができます。
さて、この定義の利点ですが、我々が通常考える自然数の順序関係<と、この集合間の関係が完全に対応します。また、はと対応します。
ここで、今まで作った集合をすべて集めてくるという操作を考えれば、上のような無限の操作ののちに、
という集合を考え、次に
という集合をさらに考えていく、ということも自然なように感じます。このような構成で得られる集合たちを順序数と呼びます(正確にはこれらの集合に共通する特徴づけを述べることで定義しますが、そういう細かい議論はここではやりません)。
順序数は、常にについて整列集合となります。したがって順序数は冒頭で挙げたように「自然数の整列性に着目した数の一般化」と思うことができます。
後々使うので定義しておくと、順序数のうち加算集合をすべて集めることで得られる順序数(これは最小の非加算順序数になる)をと書きます。
さて、何でこんな話をしているかというと、実はさっき突然家に黒い服を着た怪しい人間が謎の機械を持って現れて(めちゃくちゃ怖かった)、ぼくに以下のような言葉を告げて去っていきました。
「その機械は、100円を入れると常に200円が返ってくる。好きに使って億万長者になるがよい。」
最初はぼくも怪しいと思って触らないでいたんですが、好奇心に負けて100円を入れてしまいました。すると、黒服の男の言う通りちゃんと200円が返って来たんです。ぼくはびっくりしながらも次々に100円を入れました。すると、仕組みはわかりませんがやっぱりいつでも200円が返ってくるんです。
これは本格的に億万長者になれるぞと思い、夢中で100円を入れ続けました。おかしなことが起こったのは丁度回100円を入れ終えた後でした。手元に100円玉が1枚も残っていなかったんです。
この現象を解明するために、自分がどうやって機械にお金を入れたか考えてみます。初めに手元にある100円玉にという名前を付けます。回目に100円を入れたとき、自分の手元に返ってくる100円玉2枚にという名前を付けましょう(初めの100円を入れる操作は「1回目」とカウントします)。
さっきぼくが100円を入れたとき、「手に入れた100円玉を古い順に機械に入れていく」という方法で機械にお金を入れました。順序数に対して、回目に手元にあるお金は
(回目までに手に入れたお金)ー(回目までに機械に入れたお金)
で計算できます。
以上のことを念頭に入れれば、先ほどの現象を説明できます。回目までに手に入れた100円玉はすべて、例えば回目に手に入れた100円玉は、先ほどのぼくのお金の入れ方から、それぞれ回目には機械に入れてしまいます。したがって回の操作が終わったとき、手に入れたお金はすべて機械に投入されたことになり、手元には100円玉が1枚も残っていない状況が発生したようです。
次は同じ失敗を繰り返さないようにしようと思い、100円を入れるときにの100円玉だけを手元に残したまま、他の100円玉を先ほどと同じ規則で投入しました。すると、以外の100円玉について先ほどと同様の議論が回り、回目にはの100円玉だけが手元に残りました。
また、任意のに対しての100円玉を手元に残し、の100円玉だけを投入することで、回目の操作終了後に手元に100円玉を枚残すことにも成功しました(したがって、先ほど一時的に億万長者になりました)。
しかしこれまた不思議なことに、どんなに投入の方法を工夫しても、欲張って回まで続けようとすると、その前のどこかで資金が尽きてしまうのです。これはぼくがいけないのでしょうか?それとも機械が壊れているんでしょうか?(さっきイラついたので機械はめちゃくちゃに壊してしまいました)。後編はこれについて考えていこうと思います。